寄付金控除

前回の続きですが

弊事務所のホームページに


「法人の寄附と個人の寄附」と題して下記のとおり記載されております。

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3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。多くの命が失われたことに謹んで哀悼の意を表し、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

 さて、この震災に関して、個人をはじめ様々な企業から義援金の声が上がっています。特に、株式会社ファーストリテイリングユニクロ)は、グループ全体で3億円、グループ従業員から1億円の義援金寄附のほか、代表取締役会長兼社長の柳井正氏個人から10億円の義援金寄附、と同社ホームページ上に掲載されています。その他、同社では、同社製品を支援物資として寄贈する、同社店舗で募金活動を行う、との掲載もなされていました。(3月14日現在)

 そこで今回は、ユニクロを例に個人や法人が行う寄附に関する税の取扱いについて、お届けします。

1.法人の寄附

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 まず、法人が行う寄附です。

 法人が一定額を超えて寄附を行った場合には、超えた部分は損金とはならず、法人税の課税対象となります。しかし、一定の寄附は、この取扱いとは別に損金と認められます。たとえば、国や地方公共団体などへの寄附のほか、災害救助法の適用を受けた区域の被災者のための義援金募集を行っている日本赤十字社などを通じて義援金を寄附した場合には、全額損金として認められます。(法基通9-4-6、連基通8-4-10)
  ユニクロのホームページを読むと、「被災地への義援金として、日本赤十字社などを通じ…」とあります。「“など”」がどこまでを指すのかは分かりませんが、仮に全額日本赤十字社を通じて義援金を寄附した場合には、3億円の義援金は全額損金となるでしょう。

 また、通常、自社製品の無償供与は税務上寄附金に該当しますが、今回、ユニクロが同社製品を被災地へ支援物資として寄贈した場合のこの寄贈は、税務上寄附金とはなりません。不特定多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、税務上の寄附金とはならないからです。(法基通9-4-6の4、連基通8−4−13)このような寄贈費用を会計上寄附金として経理したとしても、税務上は寄附金に該当せず、損金として取り扱われます。




2.個人の寄附

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 次に、個人が行う寄附です。

 ユニクロでは、柳井氏個人から10億円の義援金寄附、とありました。

 個人が行なった年間2,000円を超える指定寄附金(限度はあります。)については、所得税の計算上、寄附金控除として、所得金額から控除することができます。(所法78)指定寄附金とは、国や地方公共団体などへの寄附のほか、災害救助法の適用を受けた区域の被災者のための義援金募集を行っている日本赤十字社などを通じて義援金を寄附した場合には、指定寄附金となります。(所基通78-5)
  また、このような寄附であれば、住民税では、寄附金の税額控除があります。住民税は5,000円を超える部分(限度はあります。)の10%について、税額控除がされます。(地税37の2、314の7)

 柳井氏の寄附金額は一般市民の寄附金額とは少し桁が違いすぎるため、たとえば、年収500万円のサラリーマンが10万円を日本赤十字社を通じて義援金を寄附したと仮定して考えてみましょう。

例:年収500万円のサラリーマンの場合

 [所得税]
  ・寄附金控除額の計算方法は、次の算式です。
   ───────────────────────
   次のいずれか低い額−2,000円=寄附金控除額
    ①その年中の支出額合計
    ②その年分の総所得金額等×40%
   ───────────────────────
 ・年収500万円の場合、給与所得は346万円です。
 ・他に所得がない場合には、総所得金額は346万円です。
 ・上記①は、10万円です。
 ・上記②は、138.4万円です。
 ・10万円のほうが低いため、10万円−2,000円=9.8万円が寄附金控除額です。
 ・所得税の税率を5%と仮定した場合、4,900円の税額が軽減されます。

 [住民税]
  ・寄附金控除額の計算方法は、次の算式です。
   ───────────────────────
   次のいずれか低い額−5,000円=寄附金控除額
    ①その年中の支出額合計
    ②その年分の総所得金額等×30%
   ───────────────────────
 ・上記①は、10万円です。
 ・上記②は、103.8万円です。
 ・10万円のほうが低いため、10万円−5,000円=9.5万円が寄附金控除額です。
 ・住民税の税率10%を乗じると、9,500円の税額が軽減されます。

 所得税、住民税あわせて14,400円の税額が軽減されることになります。
(その人の所得状況、所得控除等により、状況は変わりますので、一例とお考えください。)


 なお、このような控除を受けるためには、領収証や振込書の控えが必要です。来年の確定申告まで必ず保管しておくようにしましょう。


 報道機関はじめ、様々なところで募金活動が行われ始めていますが、詐欺まがいの募金メールも届いたりしています。募金をされる場合には、騙されないように注意しましょう。

参考:株式会社ファーストリテイリングHP
     日本赤十字社HP